地域

避難所準備における注意事項や課題③
「避難所の班分け」

こんな人に読んでほしい

「避難所の班分けはどうしたらいいのか知りたい。」

「どのような業務を割り振ればよいか知りたい。」

このような気持ちの人に参考になればと思います。

避難所の班分けについて

避難所には地域で被災した人や災害で被害を受けるおそれのある人など様々な事情を抱えて集まってきます。年齢や性別、障害、難病、持病、アレルギーなどの有無、乳幼児や妊産婦など、多種多様な状況が発生するので、避難所では班分けをして対応することが、円滑な避難所運営に繋がります。

班分けをするうえで知っておきたいこと

避難所開設をする上で知っておいてほしいことがあります。それは、

「計画通りになかなかうまくいかない」

ということです。

避難訓練をしていても感じるのですが、参加者の方は当然のように被災後は自分がケガも無く、家族や周りが何事もない状態があたりまえのように考えています。

自分が生き延びていることが前提になっている計画がほとんどです。

みなさんはケガをしていたらすぐに避難所に移動できますか?

家族が瀕死の状態だとしたら、その場に置いて避難しますか?

公務員の職員も人間ですので、自分がケガをしたり家族が大けがをしたとしたら、そのままにして職場に駆け付けると思いますか?

だからこそ、訓練をしたり計画を立てる際にはできるだけ様々な状況をイメージして進めてほしいと、いつも説明をしています。

班分けの種類

震災後は地域の避難所の運営に関わる方は災害対応として住民の安否確認や救出救護、消火活動など、人命救助と被害拡大防止に全力を注ぎながらも、避難してくる避難者のために避難所の開設も同時に行うことが予想されます。

しかし、多くの方が地域の災害対応に当たる自主防災組織のメンバーも兼ねていることが多く、事前に取り決めしていた通りに避難所開設に動けない人がでてくることも考えておく必要がります。

様々な上記用を予測したうえで班分けしていくことで、実際に起こるリスクをできるだけ減らしていくことを考えなければなりません。

班分け 例

・運営委員会
・総務班
・名簿班 
・広報連絡班
・施設管理班
・要配慮者支援班
・被災者管理班
・食料物資管理班
・保健衛生班
・ボランティア班

それぞれの役割を考えてみましょう。


運営委員会

災害の規模が大きいほど、行政の職員の到着の遅れや被災等により、「避難所の開設が大幅に遅れる場合が考えられます。地域住民では人数が足りず、行政からの人員の支援もなければ避難所運営に支障をきたすことになります。
突如として発生する災害に対し、避難所を開設し、先ずは発災直後から3日間・72時間の混乱期においては、住民自らが、生き残るための最低限のことを、自分たちで最優先に行っていく必要があります。
そのためには、事前に避難所となる施設を中心に地域の町内自治会、自主防災会等が一体となった「避難所運営委員会」を設置し、災害発生時に地域住民同士が連携しながら避難所を開設・運営を行う体制を整えておく必要があります。

【運営委員会のやること】

《平常時》
避難所運営の準備(避難所運営マニュアルの作成等)を行います。
① 避難所運営における役割分担の決定
② 施設の使用範囲・使用方法の決定
③ 避難所生活のルールの決定
④ 避難所開設・運営の訓練 など
《災害時》
避難所の開設と運営を行います。
① 地域の被害状況の把握と安否確認
② 作成した避難所運営マニュアルによる避難所の開設と運営

総務班

  • 運営委員会内の連絡・調整
  • 代表者会議の準備・記録
  • 災害対策本部及び関係機関との連絡・要請窓口
  • 外部との窓口
  • 避難者からの意見・要望の受付
  • 避難所外避難者からの意見・要望の受付

〇運営委員会内の連絡・調整

避難所運営委員会の各班の活動が円滑に進むよう連絡・調整を行います。必要に応じて、資料作成などを行います。

〇代表者会議の準備・記録

運営委員会の事務局として、代表者会議の開催連絡や資料作成などを行います。また会議の記録を作成します。

〇災害対策本部及び関係機関との連絡・要請窓口

班からの要請を受け、代表者の指揮により、災害対策本部及び関係機関へ連絡します。

〇外部との窓

外部から提供される物資や情報を受け付けます。マスコミ等に対しては、避難所では原則的に受け付けず、災害対策本部に行ってもらうようにします。

〇避難者からの意見・要望の受付

意見箱を設置するなど、避難所運営等に関する避難者からの意見や要望を受け付け、代表者会議へ報告します。
特に女性や外国人、障がい者、介護が必要な高齢者、妊産婦、乳幼児などの要配慮者に対しては、ニーズを十分に把握できるよう関係者や本人から意見が受け付けられる体制を作り、代表者会議へ報告します。
避難所外避難者からの意見・

〇避難所外避難者からの意見・要望の受付

避難所に避難している方と同様に、意見箱を設置するなど、物資の要望や配給方法、情報伝達方法等に関する避難所外避難者からの意見や要望を受け付け、代表者会議へ報告します。
特に女性や外国人、障がい者、介護が必要な高齢者、妊産婦、乳幼児などの要配慮者に対しては、ニーズを十分に把握できるよう関係者や本人から意見が受け付けられる体制を作り、代表者会議へ報告します。

受付班

  • 受付準備
  • 名簿管理

受付準備

避難所を開設した時に受付全般を管理

名簿作成

避難者の名簿を作成し、どのような避難者が避難しているのか見える化する。必要に応じて避難者名簿は総務班を通じて災害対策本部へ送ります。

広報連絡班

  • 情報収集と総務班との連絡・調整
  • 収集した情報の多様な手段での避難者等への提供
  • 要配慮者や避難所外避難者に配慮した情報提供
  • 外部への避難者情報の提供や発信

情報収集と総務班との連絡・調整

避難所を中心とした、地域の被災状況や生活状況、復旧状況に関連する情報を収集します。収集した情報を必ず時刻と発信元を記録したうえで、総務班を通じて、災害対策本部へ連絡します。

収集した情報の多様な手段での避難者等への提供

収集した情報や災害対策本部からの情報を整理し、時刻や場所等を明示して、代表者の指示のもと、掲示板や施設内放送、災害対策本部を通じた臨時災害放送局からの放送等、多様な手段によって避難者等へ提供します。

復旧・復興の日程の情報収集と伝達を重視して行います。

災害時は停電等により外部からの情報も途絶する恐れがあります。災害対策本部からの情報とともに、PC やテレビ、ラジオなどあらゆる手段で常に情報が入手できる状態を確保します。

要配慮者や避難所外避難者に配慮した情報提供

要配慮者(外国人や視覚障がい・聴覚障がい・知的障がいのある人など)や避難所外避難者にも情報が行きわたるように、多様な手段を使って情報提供します。

帰宅困難者に対しても、帰宅支援のための鉄道等の移動手段の情報等を提供します。

外部への避難者情報の提供や発信

避難者から提供された安否確認情報及び外部から問合せのあった情報を整理して貼り出します。受付・名簿班と連携して行います。

施設管理班

  • 施設の警備による防犯、危険箇所への対応
  • 施設利用場所の選定と利用計画の作成

施設の警備による防犯、危険箇所への対応

施設・設備について、定期的に確認します。

余震などにより新たな危険な箇所が出た場合には立ち入り禁止にします。

巡回等により、防犯・防火に努めます。女性や子どもは、人目のない所やトイレ等に1人で行かないように注意喚起します。

ごみの集約、清掃 ごみ集積場の設置、分別等の周知徹底

トイレの利用管理 トイレの設置、使用についての注意事項を貼り出し、避難者全員で清掃当番を決める。

洋式トイレは高齢者、障がいのある人を優先にします。

断水時は、ポリ袋に新聞紙を入れ、便器にかぶせて使用します。

汚物が袋に入ったらポリ袋ごと捨てます。

施設利用場所の選定と利用計画の作成

運営上必要となるスペースを確保し、既に避難者が占有している場合には、事情を説明して移動してもらいます。

要配慮者については、特別な配慮が必要な方もいますので、状態に応じた割り振り等を考え、利用計画を作成する必要があります。

施設管理者のアドバイスのもと、仮設トイレの設置場所や物資・食料の保管場所、トラック等の駐停車場所、荷おろし場所など様々な避難所の施設利用の場所選定と利用計画を作成します。

施設の耐久性を確認し、安全に避難できる環境を作ります。

食料物資管理班と連携し、施設管理に必要な道具を仕入ます。

施設の安全性を上げるために警備業務も行います。

要配慮者支援班

  • 受付班との連携
  • 安否確認
  • 避難誘導
  • バリアフリー対応
  • 設備の準備

受付班との連携

受付に来た要配慮者を受付班から引き継ぎ、避難をフォローする。

安否確認

普段から要支援者の状況を把握し、避難所に避難してきているかどうかを確認する。

避難誘導

避難所での移動やトイレなどの際のフォローに入る。

バリアフリー対応

施設のバリアフリー化として、福祉仕様のトイレの設置、入口にスロープ等の段差解消のための設備設置などを進める。また、バリアフリー化された施設が整備されるまでの間は、仮設物の用意や介助者の確保などをあらかじめ決めておく。

設備の準備

避難所における生活が長期化する場合に備えて、多様な情報機器や、日常的な介護・支援等ができる設備等を用意し、要配慮者に対してきめ細かな配慮を行う。

<要配慮者に配慮した避難所設備、備品、情報機器等>
  ○ 車椅子
  ○ 障がい者(児)に利用しやすいトイレ
  ○ 筆談用の紙と筆記用具
  ○ 伝達事項貼出し用掲示板
  ○ 文字放送付きテレビ、ファックス、パソコン等の情報機器
  ○ 多言語による案内サイン

被災者管理班

  • 避難者の把握・リストの管理・避難者等の入退所管理
  • 訪問者の受付、マスコミ等部外者の入出管理
  • 郵便・宅配便の受付・避難者への手渡し等

避難者の把握・リストの管理・避難者等の入退所管理

受付班と連携し、避難者の属性や家族構成をもとに避難者のケアを行います。観光客等帰宅困難者のリストや要配慮者の状態別リストをもとに持病の有無など様々な情報を考慮して避難所の避難者の状況をできるだけ正確に把握し、避難者のケアを行います。入退所も管理することで避難所の規模の正確な把握が可能になります。

訪問者の受付、マスコミ等部外者の入出管理

避難所への訪問者(避難者への面会など)及びマスコミ等部外者の入出を管理します。

郵便・宅配便の受付・避難者への手渡し等

外部からの郵便・宅配便や避難者への手渡しなどの受付、電話などによる安否確認等の問合せや避難者の呼出しに対応します。

食料物資管理班

  • 救援物資・日用品物資の調達・管理
  • 避難者への配給
  • 避難所外避難者への配給方法の掲示・配給

救援物資・日用品物資の調達・管理

各班と連携して、避難者のニーズを把握し、必要と認められるものについては、災害対策本部と連携して物資を調達します。不足物資がある場合は、内容、数量をとりまとめて総務班を通じて災害対策本部に連絡します。また救援物資等が直接避難所へ到着した場合は、総務班を通じて災害対策本部へ連絡します。

要請した物資が搬送されたら数量などを把握して、物資保管場所へ種類別に保管します。保管場所の鍵は物資班長が管理します。

受入作業は重労働となるので、避難者やボランティアに協力を呼びかけましょう。

避難者への配給

物資の配給は、配給ルールを決め、可能な限り全員が納得するように配慮して行います。

配給においては、避難者の協力を得て行います。配給方法は窓口配付や代表者の配付など、混乱を防ぐ方法を物資によって工夫し、高齢者、障がいのある人、乳幼児など特別なニーズに対しては個別に対応します。

女性用下着や生理用品等の配付は、女性が担当する等配慮しましょう。

外国人で宗教上食べれないものがある方や、食物アレルギーのある方などについても、個別に対応する必要があります。

避難所外避難者への配給方法の掲示・配給

救援物資は、避難所に訪れる避難所外避難者に対しても、訪れることが出来ない避難所外避難者に対しても、様々な配慮し配給方法を掲示して配給します。

保健衛生班

  • 傷病者への対応
  • 要配慮者への対応
  • 避難者の健康状態の確認
  • 感染症予防(手洗い・消毒の励行推進)
  • 生活衛生環境の管理

対応に当たっては、避難所及び地域で専門の資格を持った人(看護師、介護士、手話、外国語など)を募り、従事者として加わってもらいます。(受付に専用コーナー設置)

傷病者への対応

プライバシーに配慮しながら、避難所の傷病者、体調不良者の状況を把握し、総務班を通じて災害対策本部に連絡します。

機能している医療機関での受診を基本として、必要に応じて医療救護班の派遣について、総務班を通じて災害対策本部に相談します。(※発災直後から数日間は、医療機関への医療救護班の派遣が優先されます。避難所付近の受診できる医療機関情報をできる限り把握し、病人やけが人への緊急対応に備えます。)

避難所内に応急救護スペースを確保し、応急処置をします。必要に応じ、総務班を通じて災害対策本部に要請し、医薬品、医療・衛生器材を調達します。

重症者などの場合 119番通報または災害対策本部に連絡、必要に応じて救急
隊や医師・医療救護班の到着までの応急処置を行います。

要配慮者への対応

災害対策本部と連携し、要配慮者の生活支援・介護を行います。必要に応じ、総務班を通じて災害対策本部等に専門職員や専門ボランティア派遣の要請を行います。また軽易なボランティア支援については、災害ボランティアセンターに派遣相談します。

声かけなどにより、定期的に健康状況や困っている状況等を確認します。

避難所での介護や支援が困難な場合、福祉避難所との連携、移送を要請します。

避難者の健康状態の確認

災害対策本部体制が整った段階では保健師等が避難所等を巡回し、定期的に避難者の健康管理、健康相談、栄養指導、口腔ケア・相談等を行いますが、救護・要配慮者班でも、定期的にすべての避難者の心身の健康状態を確認します。必要に応じて保健師、医療機関、災害対策本部に総務班を通
じて連絡し、適切な指示を受けましょう。

○ 外傷を受けていないか

○ 眠れているか

○ 食事・水分摂取量は足りているか

○ 咳・熱・下痢などの症状はないか

○ 話し相手はいるか ○ トイレに行けているか

○ 脱水(口渇、口唇・皮膚の乾燥、尿量の減少、頭痛等)の兆候はないか

感染症予防(手洗い・消毒の励行推進)

インフルエンザ等による感染症を予防するため、流水による手洗いを励行します。水道が使用不可の場合は擦式アルコール消毒による手指消毒で対応します。また霧吹きなどで水をスプレーするなど乾燥防止に努めます。

トイレ前や手洗い場等に消毒液を配置し、「感染症予防(手洗い・消毒の励行)」を表示し、うがいや手洗いの励行を周知します。手洗い用消毒液は子どもの手の届かない場所に設置します。

手拭き用にペーパータオル等を設置し、タオルの共用はしないよう推進します。

消毒液・マスク・トイレットペーパー・ペーパータオルの在庫状況を把握し、早めに物資班へ補充を依頼し確保します。

食後の歯みがきとブクブクうがいの励行を推進しましょう。

生活衛生環境の管理

食料の衛生管理について、食器は使い捨てること、食べ残しは取り置きせずにその日のうちに捨てること、消費期限を過ぎたものは捨てることを避難者へ周知徹底します。

ゴミ収集の管理及びゴミの処理(分別・生ゴミの処理)を行います。

トイレと居住空間の 2 足制を導入します。

管理班と連携し、定期的にトイレの状況を把握、総務班を通じてくみ取りを依頼します。

布団の管理(日中は敷きっぱなしにしない、晴れた日には日光干しや通風乾燥など)や定期的な清掃を呼びかけます。

清潔を保つために温かいおしぼりやタオル等で身体を拭いたり、足や手など部分的な入浴を導入し、推進します。また、入浴施設等生活衛生関連施設に関する情報収集及び提供に努めます。

必要な物資を物資班に要請するなど、ハエや蚊などの対策をします。

防塵マスクの着用(手に入らない場合はマスクなど)を呼びかけて、ほこりや粉塵などの吸引を防ぐとともに、管理班と連携して粉塵の発生をおさえます。また、粉塵などの吸引で咳、痰、息切れが続く人がいないか配慮します。

定期的な換気を推進します。

ボランティア班

  • ボランティアニーズの把握・受付
  • ボランティアの要請
  • ボランティアの配置・調整

ボランティアニーズの把握・受付

ボランティアの応援について、依頼票にて受け付けます。

受付・相談コーナーを設け相談を受け付けるとともに、各班と連携してニーズを把握します。

ボランティアの要請

ボランティアの応援の要請を総務班を通じて、災害ボランティアセンターに行います。

ボランティアの配置・調整

派遣されてきたボランティアを受け付け、活動の振分けをします。ボランティアの活動に関する要請等を調整します。

【避難所にボランティアが直接来た場合の対応】
〇万が一に備えて、ボランティアの方に保険に入っていただく必要があります。
〇災害ボランティアセンターで登録を済ませるよう依頼しましょう。
〇既に保険に加入されている方が来られた場合も、総務班を通じて、災害ボランティアセンターで登録していただくことを促しましょう。

避難所では色んなことが起きることを知る。

避難所には様々な年齢層や立場の避難者が集まります。地域によっては帰宅困難者や外国人も避難してきます。多くのリスクを減らすためにも班分けを明確にしておき、避難者にも協力してもらいながら多くのイレギュラーな出来事を乗り越えていってほしいと思います。

避難所の班分けを事前想定すると

・開設準備に何をしたら良いのか理解できる。

・関わる避難所設営の手助けになる。

・スムーズな避難所開設ができると、多くの避難者を受け入れることができるようになる。

ぜひ行動を‼


班分けを計画しておくことで、被災後の避難所運営におけるリスクを減らすことができると知ってほしい。

関わる避難所について、課題を見える化しておく。

運営委員と考え方を共有する機会を増やしてほしい。

参考資料 「避難所運営マニュアル基本モデル」三重県